160612 病人寄せ集めのマンションで生活

私は病人や怪我人ばかりが暮らすマンションに入れられていた。そのマンションは十階建てくらいで、それぞれの階ごとに担当する病気が定められている。私がこのマンションに入れられたのは、私の歯の一部分が悪かったという理由だけで、重病人ばかりの周囲とは全く程度が異なっていた。

比較的患者が多い病気を受け持つ階にのみエスカレーターが備わっており、残りの階はエレベーターでの移動が主であった。そして螺旋状の階段がフロアの中心部分を貫いていた。高い階から下りるのが面倒だったり、また下の階の患者と出会いたくない場合には、その階段から飛び降りて一旦死に、落ちた場所にて生き返ることができた。「十階から飛び降りたら(名探偵コナンの)赤井さんのようになってしまう」というよく意味のわからない噂があったが、実際飛び降りてみても何の支障もなさそうだった。

私もよく飛び降りる手段を選んだが、落ちる瞬間に意識がふっとなくなって感覚が消え、数秒後に普通に生き返ることができた。それでも、「もし感覚が消えずに痛い死に方をしたらどうしよう」などという考えが頭を過ることがあり、飛び降りるときには少し勇気が必要だった。

私はある女の子と同居していた。彼女は性格が良く、少しぽっちゃりとした体型だった。ある日、私はその子と大学の先生について話していた。彼女は、アメリカ史概論のS先生が実はアメリカ人であることなどを教えてくれた。しかしそのことを言う際に彼女はS先生のことを「杉ちゃん」と呼んだので、私は初め誰について話しているのかわからず混乱した。「それ誰やっけ」と聞いてみると「は?」というような顔をされた。

マンションの入り口にはホテルのレセプションのような場所があり、そこにそれぞれの部屋用のメッセージカードがあった。同じ部屋に住んでいるが顔を合わす機会がない人たちの連絡手段として用意されているものだ。私と同居している女の子は、このカードにお互いの行った場所の記録・行く場所の報告を書いて伝え合おう、と提案してきた。